鳩山総理の会見について(2009.12.25朝刊)
街が華やいだクリスマスイブの24日は、奇しくも鳩山政権発足後100日目という節目となる日でした。
その夕方、自らの献金問題で元秘書2人を起訴に追いやった鳩山首相が謝罪の会見を行い、一方で辞任せずに政治責任を全うすると述べました。
中でも、会計責任者であり、長い間鳩山家に尽くした公設第一秘書の名を「勝場」と16回も呼び捨てして責任をなすりつけました。
かつて、「秘書が不正をはたらいた責任は政治家にあるからバッジをはずせ」といっていたのは鳩山氏です。
また、12億円以上もの大金をわが子に支援してくれた母親について「なぜ母が一言も話をしなかったのか」という発言するなど、親不孝の極みです。
何も知らなかった、自らは関与していないという責任逃れに終始するその態度には、多くの国民が内閣総理大臣としての資質を疑わざるを得ませんでした。
虚偽申告による贈与税に対する追徴額は、重加算税を含めても最高でも50%だそうです。法にしたがって、修正申告をして6億円強の納税をすれば、それでいいのでしょうか。
億を超す脱税は、本来なら逮捕され、強制捜査をされる身です。それを不起訴とした東京地検の態度も不公平だと思います。
なぜなら、この脱税は、鳩山由紀夫氏個人だけでなく、友愛政経懇話会の代表としての公人の責任もあるからです。
「私腹を肥やしたことなどない」と言っていますが、この巨額の資金を何に使ったのか、捜査するべきでしょう。
「今回の件で心から反省をしている」というのなら、大富豪である鳩山氏は、ロック・フェラーやビル・ゲイツのように、恵まれない者への慈善活動、寄付行為を行うべきです。
国に納める追徴金と同額以上の寄付を、社会福祉事業――たとえば児童福祉施設、障害者施設、老人福祉施設など――に寄付したらいかがでしょうか。
今日はクリスマスです。
クリスマスプレゼント、あるいは新年のお年玉として寄付を行い、国民に対する謝罪と脱税の償いとして、具体的行動で示すべきです。
弟の邦夫氏も同然です。
私は、「貧者の一灯」として、毎年クリスマスには東京育成園という児童福祉施設の子どもたちにお菓子のプレゼントを続けています。
1954年目黒警察署警部補のとき、1万円の月給の中から850円のサクマドロップス大缶をプレゼントしたのが最初でした。
56年目となる今年も、12月23日に、妻とサンタクロースをしてきました。
これが、「ノーブレス・オブリージ(高い地位にともなう重い責任)」というものではないでしょうか。
香港在勤中の3年を除き53回サンタクロースを続けてきた私には、鳩山兄弟にモノを言う資格があると思います。
社会的弱者や不況にあえぐ人たちを救うために、自らの財産を国の福祉財源の一部に投じるくらいのことを、“お金持ちの首相”にはしてもらいたいと思っています。
しかし、本当に知らなかったとすれば、やはり「宇宙人」だったのでしょう・・・。
産経新聞「正論」欄掲載論文「正視に耐えぬ現政権『朝貢の図』」(2009.12.17朝刊)
<天皇陛下にも非礼な会見>
15日付の朝刊各紙は、第1面で大々的に≪小沢-羽毛田≫論争をとりあげていた。
天皇陛下の習近平中国国家副主席との「特例」会見が、「天皇の政治利用」につながるかどうかが論点である。
筆者は、これは民主党の小沢一郎幹事長と鳩山由紀夫内閣の「天皇の政治利用」だと断ずる。
羽毛田信吾宮内庁長官は、国家行政組織法で授権された国家公務員としての任務、すなわち、天皇陛下のご健康を気遣い、一視同仁、政治外交上の中立性を守るべき天皇をお守りする任務を遂行した人物で、記者会見で一党の幹事長に、怒りに任せて公然と辞表を出せといわれる筋合いはない。
以下、政治利用と断ずる、その理由を列挙したい。
1、まず一政党の幹事長に宮内庁長官の罷免権はない。
いかに役人嫌いであるからといって、天皇の信任を受けている同長官への悪口雑言は、天皇に対しても非礼である。
宮内庁長官の任免は、天皇と内閣総理大臣のなすべきことであり、一政党の幹事長が記者会見でいうことではない。
<「国事行為」の理解に誤り>
2、小沢幹事長は記者団に「憲法、読んだこと、あるのか」と礼を失する発言をした。
確かに、日本国憲法第7条「天皇の国事行為」の項には、「天皇は内閣の助言と承認により、国民のため左の国事に関する行為を行う」とあり、憲法改正、国会の召集、衆議院解散など10項目が限定列挙されている。
外交に関しては第8項「批准書や外交文書の認証」と第9項「外国の大使及び公使の接受」だが、要人との会見は明記されていない。
今回の習副主席はもとよりオバマ米大統領をはじめ外国の元首、首相などと天皇との会見は「国事行為」ではなく皇室外交の国際礼譲であり、さらにその助言役は宮内庁の羽毛田長官である。
今回の会談を「内閣の方針」による「国事行為」ということこそ、不勉強による誤りである。
3、「1カ月ルールは誰が決めた。法律に書いてあるか」「内閣の決定したことに反対なら辞表を出してから、ものを言え」という小沢幹事長の羽毛田氏非難も多分、国民はその傲慢で高圧的なもの言いぶりに反感を抱いたと思う。
宮内庁への全国各地からの羽毛田氏支持の声はFAX、電話など1日で1千件を超したという。
4、最も妥当性を欠くのは、「天皇の体調がすぐれないなら、優位性の低い行事はお休みになればよい」という発言だが、鳩山総理もこれを支持したという。その大小の決定をするのも内閣なのか。
では問うが、中国は大国だからルールに反してもよいが、小国なら接受しなくてもよいのか。
身体障害者施設や老人・児童施設への行幸は、大きいことなのか、小さいことなのか。
両陛下の国民をおもいやる優しい心からみれば、また皇室のため、内閣のためにも「大きなこと」ではないのか。
この発言も、大小、強弱を問わず何事も公平にという両陛下の大御心(みこころ)にそわぬものと心得る。
この点、国会開会式に「もっと思いが入ったお言葉を」といった岡田克也外相の発言にも、天皇の政治利用の下心を感じさせられた。
<対米関係にも悪影響>
5、習副主席が天皇に会うことは東アジアの平和と繁栄のために良いこと、と筆者も思う。だが、そんな大きな外交日程がなぜルール通り1カ月前に決められなかったのか。そこに、600人を率いて行われた小沢訪中とのパッケージ・バーター外交ではないかとの疑念を禁じ得ない。
中国が天皇を政治外交に利用したいと考えていることは、江沢民前政権以来、明々白々である。
そこへ大訪中団を率いて訪れ、国賓並みの歓迎を受け、このパッケージ外交で迎合したのではないだろうか。
報道によれば、小沢幹事長は「解放軍の総司令官だ」と自己紹介したという。
自民党から「解放」したというつもりなのだろうが、アメリカはそうは思わない。
アメリカの占領からの解放ととり、不快感を強めるだろう。
143人の現役議員全員に、1人1秒足らず、胡錦濤主席と握手させ、写真を撮らせる演出は、まさに宗主国に恭順する近隣国の“朝貢の図”で、誇りある日本人の正視に耐えない。
そうすると、先月中旬、学習院大学ホールで上演された中国人民解放軍総政治部歌舞団のオペラを、お忍びで皇太子殿下が観劇したのも、このパッケージの一部だったのかとかんぐりたくなる。
総監督の人気オペラ歌手は習副主席の妻だからだ。
小沢氏の記者会見は、いい気分で凱旋した日本で小役人が反抗したことへの怒りの表れと思うが、天皇を戴くのは日本の2千年の政治の知恵であり、世界に比類のない国体である。
平時は「権威」として政治に関与せず、民族の存亡にかかわる重大な時に、国民統合の象徴としてお力を発揮していただくというのが筆者の見解だ。
ゆめゆめ一内閣の外交、ましてや党利党略に乱用することは許してはならない。
●ホームページ掲載にあたっての追記:
本文中、「宗主国に恭順する近隣国の“朝貢の図”」の部分(最後から2つめの段落)、原稿執筆時には「宗主国に恭順する近隣国の偽国王の“朝貢の図”」と書いていたのですが、掲載時には字数の関係等で4文字が調整となってしまいました。
残念・・・(笑)。
中国で胡錦涛国家主席に自らを「人民解放軍の野戦司令官」と名乗ったこの傲慢な偽国王の姿に、「驕る平家は久しからず」という一節が浮かびました。
なお、掲載にあたり、佐々事務所にて改行や行間をあける等の調整を行いました。
「アフガニスタン復興支援金拠出について」(2009.11.13)
鳩山内閣が、インド洋給油支援活動に代わるアフガニスタン復興支援活動のために50億ドル(約4500億円)の拠出を表明しました。
普天間基地問題の結論を出せないままオバマ大統領を迎えることになった日本が、内訳をきちんと決めないままにとりあえず総額を示した、拙速感が否めません。
2001年に開始した海上自衛隊によるインド洋での給油活動は、専守防衛で攻撃能力のない、武器使用も認められない自衛隊という部隊を持つわが国が、世界一といわれる、誇れる給油技術で、国際貢献をするという方法でした。
アフガン本土では米軍死傷者のほかにも、ISAF参加の活動要員がすでに1500人以上亡くなっており、そこはタリバンにとって「外国人はみな敵」という戦地です。
その本土から遠く離れた、海上という安全な場所で行う給油支援は、現在の日本にとって最良の選択肢だったのです。
しかもその活動経費は、2001年12月~2007年7月までの5年半で約560億円。補給した燃料と水の費用だけでは216億円で、今回支援を表明した4500億円よりもはるかに低い金額ですが、その活動は国際社会から大きな評価を得ました。
私が思い出すのは、1991年の湾岸戦争の際に130億ドル(1兆3000億円)も拠出しながら、何の感謝もされなかったという屈辱の過去です。
戦後、ワシントンで行われた凱旋の観閲式では、多国籍軍を派遣した28カ国の大使が壇上に招かれましたが、日本は招待されませんでした。ブッシュ大統領の演説も、「28 arise and the other countries(28同盟国とその他の国よ)」と、日本は「その他の国」扱いをされ、米紙に掲載された感謝の広告にも、日本の国旗は描かれませんでした。
アーミテージ国務副長官は、米国同時多発テロの際に「Show the Flag」、イラク戦争の際には「Boots on the ground」と呼びかけ、日本はそれに呼応しました。
アメリカは同盟国に、旗幟鮮明に、そして実際に現地で活動することを求めているのです。お金だけ出しても、何の感謝もされないのです。
さらにいえば、現在の鳩山政権は、来年度の予算編成にあたって、事業仕分けの真っ最中。
一方的に矢継ぎ早の質問を浴びせ、相手の説明を聞く耳など持たず、1項目わずかに1時間程度でバッサリと予算の廃止や削減などを判断する作業を行っているところです。
それなのに1兆4500億円を拠出するという、この矛盾。しかも、今後はさらなる追加支援を求められることでしょう。
11月6日にはメコン川流域支援に5000億円もの拠出を約束したばかりです。
「友愛」の外交とは、国内の財政状況を無視したばらまき外交のことなのでしょうか。
真の同盟国として関係を強化するにはどうしたらよいのか、派遣される要員の安全を確保し、かつ国際社会から評価を得るのはどのような貢献策なのか。
鳩山内閣は外交・防衛に関してあまりに未経験で、不勉強です。
「高名の木登り」(2009.10.30)
10月26日の読売新聞「編集手帳」欄に、『徒然草』にある「高名の木登り」という一節(第109段)が紹介されていました。
――高い木の上で作業する弟子職人を、黙って見守っていた名高い植木屋の親方が、職人が作業を終えて下りてくる際に、軒の高さに来たところで「あやまちすな、心して降りよ」と声をかけた。尋ねたところ、「危険な高さのところでは、自ずと恐さがあって気をつけるのです。落ちるのは、きまって安心な高さになったところでなのです」と答えた―――という話です。
つまり、「〝あと少し〟という心のゆるみが、事故や失敗のもととなる」という教えです。
スポーツの世界での逆転負けなどがそうです。
野球の9回裏やサッカーのロスタイムでの逆転劇。
ドーハの悲劇などは代表的です。
昨年の北京オリンピックでも、女子柔道の決勝戦で、終始優勢だった日本選手が残り8秒で逆転一本負けとなった姿が、私の記憶には強く残っています。
奇しくも読売新聞のこの記事を読んだ翌日、関門海峡で海上自衛隊の護衛艦「くらま」と韓国籍コンテナ船の衝突事故が起きました。
「くらま」はインド洋にも派遣されたことがあり、その2日前には海上自衛隊の観艦式で旗艦をつとめ、菅直人副総理が乗艦したという、海上自衛隊を代表する護衛艦の一隻です。
観艦式を成功裏に終え、母港の佐世保まで帰還する途中、あと一歩というところでの事故でした。
今回を含め、自衛艦の大きな事故は、1988年の「なだしお」衝突事故、2008年の「あたご」衝突事故も、(1)大きな任務を果たしたあと (2)母港まであと少しの地点 で起きている、という共通点があります。
「なだしお」は伊豆沖での訓練後、横須賀への入港直前に遊漁船「第一富士丸」と衝突し、30名が死亡、17名が負傷重軽傷を負いました。
「あたご」はハワイ沖でミサイル訓練を終えて横須賀に戻る途中の浦賀水道内で漁船「清徳丸」と衝突し、2名が行方不明(後日死亡認定)となりました。
「くらま」は、狭い関門海峡を通過するにあたって全員が配置につき、見張りも怠りなく行いながら航行中だったとのことですが、事故とはまさにこのようなときに起こる、という典型でした。
「高名の木登り」――危機管理、安全管理、そしてすべての人間の行動の〝油断〟を戒める教訓として、心に刻んでおきたいものです。
鳩山内閣の発足にあたり(2009.9.18)
鳩山総理が誕生し、新しい内閣が発足しました。
新しい閣僚の顔ぶれを見ますと、取り立てたサプライズなどもなく、ベテランと中堅を上手に起用していることに、政策実現に向けた決意が感じられました。理想に走らず、現実を見据えた、なかなか適材適所の実務的内閣であると思います。
疲弊した自民党政権ではなしえなかった、「国民のための政治」が実現することを願います。
しかし、やはり新政権の不安要素は安全保障問題です。
鳩山首相は就任会見で、「当面重要視するのは子ども手当、暫定税率撤廃など、家計刺激の政策とそのための財源」というようなことを言っていましたが、危機管理の観点から言えば、国民の生命・身体・財産を守る安全保障をないがしろにしてはならないのです。
今そこにある危機――北朝鮮の核・ミサイル問題から、国民を守るのは国の役目です。
3党連立合意文書には「地位協定改定」「米軍再編・在日米軍基地見直しの方向」という文言が書かれました。
しかし、本当に対等な日米同盟関係を望むなら、本来修正すべきは日米安保条約第5条です。集団的自衛権を行使できない日本にとっては、この条項がある限り日米安保条約は片務条約で、日本はアメリカに守られている保護国なのであり、安全保障において対等な立場などありえません。
また、防衛庁は来年度の概算要求としてミサイル防衛に1761億円、そのうちPAC3関連に944億円を計上しましたが、新政権発足により、これらは一旦白紙となってしまいます。
ミサイル迎撃体制が十分ではなく、集団的自衛権も行使できない日本にとっては、地位協定改定や基地見直しを主張するより、オバマ政権から「核の傘」のコミットメントを取り付ける方が現実的ですし、日米安保条約の目的に合致します。
その上で、これから先、わが国がきちんとした防衛能力を備え、基地問題、思いやり予算などを含めた対等な関係へと踏み込んでいくのが、正しい日米関係のあり方だと思います。
23日には日米首脳会談が開かれる予定です。
具体的議論にはまだ踏み込まないでしょうが、オバマ大統領とどのような信頼関係を築いていくのか、見守りたいと思います。
衆院選総選挙結果を受けて(2009.9.8)
今回の衆議院総選挙の結果、私の盟友であるベテラン政治家たちも含め、自民党は多くの議席を失いました。
結果として議員の45%が入れ替わり、平均年齢はこれまでで一番若い52.0歳となりました。女性も54人が当選しました。
また、世襲議員が約4割も減り、30名以上の閣僚経験者や、いわゆる「族議員」も多数落選して、「地盤・看板・カバン」が崩れたことは、大きな特徴であると思います。
さらに、政治家を目指して勉強をしてきた松下政経塾卒業生や、現代社会に問題意識を見つけて勉強をしてきた一新塾出身者が、議席を増やしました。
今までの自民党政権ではなしえなかった、国民のための新しい時代を築いていってくれることを、これらの新勢力に期待したいと思います。
今後、この国の安全保障・危機管理についての不安や、「国家戦略局」設置、各省庁への議員100人配置によって生じるであろう混乱に対する危惧はぬぐえません。
これらについては、今後述べていきたいと思います。
2008年
2006-2007年
2004-2005年
それ以前
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